片岡 護/『アルポルト』オーナーシェフ

CHEF’Sシェフインタビュー

■片岡 護/『アルポルト』オーナーシェフ

  • #首都圏
  • #イタリア料理

プロフィール

昭和23年9月15日東京都品川区に生まれる。母が外交官金倉英一の家で家政婦として務めていた縁で、中学生時代にイタリア料理と出会う。東京都立田園調布高等学校卒業。母親の知人の外交官がイタリア総領事として赴任する際に「コックとして付いて来ませんか?」と誘われたのが、そもそも料理人になるきっかけとなった。渡伊までの、3ヶ月は「つきぢ田村」で鍋洗いと刻みを修行。1968年イタリアに渡ってからは総領事付きのコックとして修行の毎日を過ごす。5年後に帰国し、「小川軒」「マリーエ」を経て、1983年港区西麻布に「リストランテ アルポルト」をオープンし、今に至る。
2020年(社)日本イタリア料理協会 会長就任。

店舗情報

アルポルト

[イタリア料理]

アルポルト


住所:東京都港区西麻布3-24-9 上田ビルB1F
電話:03-3403-2916
http://www.alporto.jp/

応援メッセージ

interviewシェフインタビュー

Episode-1

―料理人を目指したキッカケ
美大受験に失敗したが、「コックにならない?」という話をいただき「筆を包丁に持ち帰ればいいんだ」と思った



―料理人を目指したキッカケは何ですか?

片岡シェフ
デザイナーを目指していまして、その大学受験に失敗したのがキッカケです。
それで三浪をして、もう一回チャレンジしようと思ったときに
「コックにならない?」という話をいただいたのが、料理人になるキッカケになったわけです。

―全く別の道ですね。

片岡シェフ
普通の人は別だと思いますが、僕たちはそう思わないです。料理だってお皿の上にデザインするわけですから。
自分も最初は迷っていたのですが、ある時そういう事を言ってくれた先生がいました。
それで、「筆を包丁に持ち変えればいいんだ」と思い、料理の道を進むことになりました。

Episode-2

ー数ある料理ジャンルの中から、このジャンルを選んだ理由
自分の性格に合っていたし、パスタが好きだから



ー数ある料理ジャンルの中から、このジャンルを選んだ理由は何ですか?

片岡シェフ
自分の性格に合っているからです。
僕はパスタが好きだった。中学生後半から高校生くらいの頃にパスタに興味をもちました。

―パスタに興味をもったキッカケは何でしょうか。

片岡シェフ
美味しいパスタを食べたからです。それがカルボナーラです。
その当時、今から56年前はパスタが売っていなかったので、
ナポリタンをスナックとかで食べられるような時代でした。
そういう時代だったので、本格的なチーズや卵を使用するパスタはまだ皆無だった。

―どこで美味しいパスタと出会いましたか。

片岡シェフ
イタリアの外交官にカナクラさんという方がいらっしゃって、
そこにうちのお袋が家政婦として勤めていたので、それがキッカケです。



1番最初の答えが性格にあっていらっしゃったということでしたが、
もう少し具体的にイタリアンに
進むのに向いている性格、合った性格はどんな性格がいいでしょうか。

片岡シェフ
いい加減なところ、大雑把なところ。
フランス料理はどちらかというときっちりした部分があって、
性格的には血液型がA型の人が合っている。
僕はB型だから、どちらかというとイタリアンの方になる。

―迷ってではなく、自分がやるのならイタリアンだったのですね。

片岡シェフ
パスタはイタリア料理ですからね。
その頃、イタリア料理なんてものは、全然どういうものなのかが分かりませんし、
日本に帰って来た時には、まだそういうジャンルがなかったので、
パスタをどうやって美味しく作ることが出来るのか、
それをどう表現して自分が1番上手なパスタの料理人になろうかという気持ちでいました。

Episode-3

―料理人として忘れないようにしている心構え
自分を主張しないでお客様に尽くすこと



―料理人として、忘れないようにしている心構え(意識)はありますか?

片岡シェフ
料理人の心構えというのは、滅私奉公だと思っています。
自分の意思を殺して人のために尽くすことです。これは古い考えなのよ。
でも今の人にそれを言っても無理です。
まず、自分を殺すなんてこと絶対にできないです。自分が中心だから。
そうすると、自分のことしか考えない人間になってしまうから、
自分の料理を押し付けることになってしまう。
だけど僕たちサービス業というのは、お客様の意思をどうやって尊重して
お客様に合わせるかということです。
料理人になる心構えとして、自分を犠牲にしてもお客さんのために尽くすということが大切です。

―それはどんなサービス業にも通じるものがありそうですね。

片岡シェフ
古い言葉ですが、それくらいの気持ちを持たないとダメですよ。
もちろん自分を大切にしたり、自分の休暇の時に自分の人生を有意義に使ったりすることも大切ですが、
そういう気持ちをもっていないとサービス業は成り立たないと思います。

―今の時代の人たちにはなかなか難しいとおっしゃっていましたが、当然今の時代の方たちも
お店に入
っていらっしゃることもあると思いますが、その辺りはどうやって伝えていらっしゃいますか。

片岡シェフ
それは自分(私)の姿を見せることです。
アルポルトに入ったらアルポルトの歩き方になるし、動き方、味になって、カラーに染まっていきます。

Episode-4

―影響を受けたココロに残る料理
ポールボキューズの有名な料理「スズキのパイの包み焼き」



―影響を受けた(心に残っている)料理を教えてください。

片岡シェフ
影響を受けた料理は沢山あります。
自分は一般的な料理人のように、苦労をして下積みからやってきたような料理人ではないです。
だから急にポッとなったようなものなので、そういう風に言われても困っちゃいますね

具体的には、フランスに行った時のポールボキューズの有名な料理「スズキのパイの包み焼き」。
23歳くらいの時。今から49年前。その時は自分1人でお昼を食べに行きました。
若造が3つ星の超一流の神様みたいなところに食べに行くわけです。
そこにイタリア人のトップのマネージャーがいて、イタリア語で会話をしたら、
なぜイタリア語で話せるのか聞かれて、そのあと全部の調理場を案内してくれました。
そういうことがあって、料理をいただいたときに、元々イタリア料理を何年かやってきて、
現場を見ているので、イタリア料理とフランス料理との違いをその時にすごく感じました。
日本料理の基本的な色をきれいに茹で上げるとか、触感とか、見た目とかの
五味五感が生かされたフランス料理だと思ったんです。
その時にパイ包みだけではなくて、サービスとか色々な事を考えて、
非常に感激して、自分の料理に対する見方が変わったときですね。

―普通は23歳の若者が、1人でお客さんとしてきても厨房に案内されるということはないのではないですか。

片岡シェフ
そのマネージャーがすごくいい人でした。
僕が全然修行をしないで(イタリア)に行ってしまって、25歳で(日本に)帰ってきたときに、
もう一回修行に入ろうと思った先がポールボキューズの監修をしている「レンガ屋」さんでした。
あとは「プレセント」と「小川軒」の3つの候補があって、僕は「小川軒」にたまたま入りました。
自分としては、料理というのは自分の性格や経歴に合ったことを活かすのが大切だと思っているので、
すごくそれはラッキーでした。
そういうことがあると、自分の料理の出会いをいかに大切にするかだと思いますね。
それから人生の中で1番最初に出会ったイタリア料理の「カルボナーラ」というのも大切だと思います。



―改めまして、影響を受けた(心に残っている)料理を教えてください。

片岡シェフ
心に残った料理は今言ったような料理ですが、僕はフランス料理が結構好きだったので、
色んなところに旅行していますが、イタリア料理でしたらパスタ料理になります。
その中で僕が感動したのは”グリツィアという
北の町で食べたパスタで「木こり風パスタ」というのがある。
ツナとキノコを煮込んだソースで和えたパスタですが、
それを食べたときにはこんなに美味しいパスタがあるのかと思いました。

僕はミラノの公邸(総領事館)に勤めていたのですが、その公邸の運転手が休暇でベニスに行っていて、
遊びに来いと言われベニスに行ったんです。車でグリツィアに連れて行ってくれて
そのパスタを食べさせてもらった。それがすごく印象に残っているんです。
それと同じように「ボスカイオーラ」という同じ料理にローマでも出会うんです。
僕がお世話になった千葉さんという方がその店に行って食べてきなさいと言ったパスタがそれでした。
ですからアルポルトの「スパゲッティ・アッラ・ボスカイオーラ」は
そういう料理はそこから生まれてきたのです。

Episode-5

―影響を受けた人
「つきぢ田村」の田村平治さん



―影響を受けた人物はいますか?

片岡シェフ
私が19歳の時に、つきぢ田村さんにイタリアンへ進むためには日本料理が出来ないとダメと言われて、
研修に入れてもらいました。3か月間。その時のご主人が田村平治さんです。
本当にすごい人で、上手く料理を完成させて、絶対に無駄を出さないです。
その当時日本の料理界で非常に有名な料理人で、今は3代目の隆君がやっていますけど、
僕が研修入ったときに隆君は小学生くらいでした。
僕は平治さんの料理人としての姿がずっと目に浮かびます。

Episode-6

―過去に「もうダメだ!」と思うような試練
試練はないです



―過去に「もうダメだ!」と思うような試練はありましたか?

片岡シェフ
ないです。だから自分は本当に危機感というものがなくて、
普通は修業に1から入ってボコボコ殴られながら、洗い場から何からやっていますが、
僕は最初からシェフだったから、、修業時代がないです。

―なかなかそういう料理人の方っていらっしゃらないですよね。

片岡シェフ
いないですね。多分僕が初めてだと思う。
それでいて、料理人としてシェフとして「こんな料理出して」ということもしてないです。
それなりにちゃんとやっています。

―サクセスストーリーですね

片岡シェフ
サクセスじゃないよ。これは冒険だよ。

―修業もなく、試練もなく、これだけの名店を長年されているというのは本当に夢のような物語だと思います。

片岡シェフ
自分の料理感とか、料理の舌の感覚は、ミラノに連れて行ってくれたカナクラさんが、
自分(私)の舌の感覚をちゃんと分かってくれていたみたいです。
だから何も知らない僕を連れて行って育てようと思ってくれたんだと思います。

―それを見抜いた方もすごいですね。

片岡シェフ
僕はカルボナーラ食べたでしょ。僕は高校生の時にそのお家に通っていました。
どうしてかと言うと、犬がいて、パーティーなんかがあると、
その犬の面倒をみるために留守番をしていました。
その時に色々な美味しい物を食べさせてくれました。
その時に僕が食べて美味しい物は美味しい、まずい物はまずいと言っていたので、
この子は(良い)舌があるのではないかと思ってくれたと思います。



―そのころの日本には、カルボナーラはもちろん、そういったイタリアンや
お料理に接する機会もほと
んどの人がもっていなかった時代に…

片岡シェフ
僕が絵の勉強をしていた当時、紀ノ国屋に買い物に友達を連れて行って
「あれ買え、これ買え」と一緒にやっていると「こいつはおかしい」と言われていましたね。

―ある意味その時代に舌が磨かれていったのですかね。

片岡シェフ
それは分からないですけど、分からないなりに続けてこられたことで、今があると思います。

 

Episode-7

―今のご自身を作り上げた原動力
どんなに嫌なことがあっても何をしても続けていくためには健康管理が第一



―今のご自身を作り上げた原動力は何ですか?

片岡シェフ
やはり継続でしょうね。どんなに嫌なことがあっても何をしても続ける事というのはすごく大切です。
継続がなかったら自分がないわけで、継続するための手段を考えることです。
それにはただ料理ができるだけではダメで、1番大切なのは健康管理。
いくら料理が上手でも50歳で死んだら終わりですよね。
今は道場六三郎さんとかも90歳まで続けていらっしゃいますが、そういう風に継続することが大切です。
死ぬときに包丁を握って死ねれば幸せでしょうね。僕はパスタを振るう鍋が動かせればいいです。

70歳には見えないですよね。健康管理はどんなことをされていますか。

片岡シェフ
健康管理は医者に行くことです。
食べることは、ちゃんと良いものを食べる。朝食はしっかり食べて、3食きっちり食べること。
夜はなるべく炭水化物を少なくして果物を食べない。色々気は使っています。
それをしてくれるのはうちの家内だから、やっぱり家族というのは大切です。

Episode-8

―向上心(モチベーション)を持続させるためにしていること
健康管理とストレスを溜めないために趣味を持つこと



―向上心(モチベーション)を持続させるためにしていることはありますか?

片岡シェフ
それも自分の健康を管理していないと出来ないわけですよね。
継続する力とか、モチベーションということは本当に健康ということが大切で、これを料理人は皆忘れます。
夜遅くまで仕事をしてから飲みに行ったり、ラーメンを食べたりするのは、
若いときはいいけど50歳過ぎてから同じことをしていると絶対にどこか悪くします。
ですから、その辺のところを控えて、なるべく夜(の食事)は少なくして、自分の食の管理をする。
飲みすぎない、遊びすぎない、夜は早くに寝て睡眠時間を取るということです。
それが出来ることが大切であり、向上心やモチベーションを持続させる気持ちを
自分に持ち続けることができるということだと思います。

―改めまして、向上心(モチベーション)を持続させるためにしてることはありますか?

片岡シェフ
健康管理で、食べることに気をつけることです。
それからストレスを溜めないこと。趣味を持つことです。



―片岡シェフのストレス解消法の趣味は何でしょうか。

片岡シェフ
競馬です!ところが今はコロナで全然ダメですね。ストレスも溜まっちゃいますね。
競馬はギャンブルだからダメだというけれど、それは普通の人がやる競馬だからダメなのです。
お金を使って、財産をなくすようなことをするギャンブルとして扱うからです。
でも、あれは推理として考えると、こういう馬がいて血統はこうで、
こういう走り方をして等、色んなことを推理として考えることが楽しいのです。
お金はそんな賭けないんです。なにしろ当てなきゃ面白くないんです。
そのための努力なんです。そうすると自分のストレスはすっとなくなります。
(当てるまでの)推理が楽しいんです。

それだけじゃないですよ。他にも色んなお店に行って料理を食べることも好きだし、
音楽を聴くことも好きだし、良い絵を見ることも好きだし、
良いお皿を色んなお店に行って見ることも好きだし、思わず衝動買いしちゃうからね。何百万でも買います。
そういうのは、趣味の範疇になってきます。
その人がどういう趣味を持っているのか、お金を貯めているのも趣味だし。

Episode-9

―師匠や先輩から学んだ最も大切なこと
人との関わり、人間関係を大切にすること



ー師匠や先輩から学んだ最も大切なことは何ですか?

片岡シェフ
人との関り、人間関係、付き合い方を大切にすることです。

―具体的なエピソードはありますか。

片岡シェフ
“お金を貸してくれとしょっちゅう来ますよ。
それで僕は貸していましたが、お金を返す人もいれば返さない人もいましたね。
そういう人との関り合いを大切にしないと、お客さんも来ないし、お客さんとのお付き合いもあるだろうし、
やっぱり人との関わり合い、出会いを大切にすることだと思っています。
僕たちはサービスをしていて、お客さんと会ってお話をすることも1つの出会いですし、
同僚達とどこかへ旅行や食べ歩きをしたりすることもお付き合いであり、
お客さんを外国に連れて行くのもつながりだと思いますし、人との関りが一番大切だと思います。

―具体的に先輩から教えられたことはありますか。

片岡シェフ
僕はあまり先輩がいないから
でも人生の先輩は沢山いますから、そういう所で色々聞いたりしています。
その中で人間関係を大切にするということでしょうね。

Episode-10

―料理づくりのインスピレーションを感じるコトやモノ
他の料理人の料理を食べること
「どうやって作るんだろう レシピはどうだろう」とは考えない
食べたときに感激するということ



ー料理づくりのインスピレーションを感じるコトやモノがあれば教えてください。

片岡シェフ
自分の料理を作るときのインスピレーションというのは、人の料理を食べることです。
僕はイタリアンですけど、日本料理、フランス料理、中華料理、お寿司、天ぷら、居酒屋に行ったり、
例えば秋が始まるときに、「こんな食材が出てきている」、例えば菊の花の料理が出たりとか、
松茸が出てきたりとか、美味しいお魚で旬のものが出てきたりとか、
もうこんな季節になったんだと思いながら、自分の料理をどういう風に作っていくのかを考えています。


―他のお店で旬の食材を召し上がりながら、そういったものを感じ取って、
それをご自身のお店で生か
していくという感じですかね。

片岡シェフ
食べながら、インスピレーションを感じます。もちろん外国に行くときもそうです。
だからあまり分析はしないです。「どうやって作るのか、レシピはどうだろう」ということは考えないです。
自分の口の中で感じた味のイマジネーションや、盛り付けられた感じを、何回も色々と食べると、
ある時に自分が料理を作ろうと思ったときに、そういったものがパッと出てくる。




―例えば、お邪魔するお店はどうセレクトしていますか。

片岡シェフ
色んな人から聞いて、情報を集めています。雑誌とか色んなメディアとかから。
それで失敗することもあるし、成功することもあります。
それから、人が連れて行ってくれる所もあります。

―結構な頻度で行かれていますか。

片岡シェフ
そうですね。食べることが僕たちの仕事ですから。

―プライベートでもあるし、半分仕事という気持ちもあるんですね。

片岡シェフ
仕事で行くことはないです。プライベートで行きます。気持ち的には

―常にインスピレーションを感じていますね。

片岡シェフ
インスピレーションは考えないです。自分が料理を食べたときに感激するということです。
こんな美味しいものがあるだ、こんなこと考えているんだ、素晴らしいなぁと。

―お店はすごく有名なところから、居酒屋というキーワードも出てきましたが、ジャンルに関係なく、
色んな所に気づきが今までありましたか。

片岡シェフ
じゃあ居酒屋と料亭ではどこが違いますか?
美味いものを食べるときは、そんな差はありません。居酒屋は居酒屋の良さがあるし、
自分が今何を食べたいのかというシチュエーションによって決まるわけです。

Episode-11

―自分の専門分野以外の味を勉強する必要があるか
色んな食材の調理法を学ぶために必要
勉強ではなく、それを楽しむこと



―自分の専門分野以外の味を勉強する必要がありますか?

片岡シェフ
あります。僕はね。それは料理人として色んな食材の調理法を学ぶためです。
例えば中国料理は、蒸したり焼いたり、下処理をサッと油で揚げたり、
お湯で通したりしてから炒めて、触感を大切にしながら瞬間にできる料理だと思います。
でも反対にイタリア料理というのは、瞬間ではなくじっくりコトコト煮る弱火の料理だと思います。
ですからその辺でちょっと違うんです。違ったものを食べるのはすごく勉強になります。

―違ったものから、どういったことを学んでいらっしゃいますか。

片岡シェフ
それをイタリア料理に活かして、自分の料理に加えています。

―今は料理という料理も沢山ありますが、全ての料理の色々な勉強をしていますか。

片岡シェフ
勉強ではないです。それは楽しむことです。
だから調理法をこういう風に作っているんだな、こういう食材使っているな、
自分には表現出来ないなとか、そういう事を食べ歩きながら見ています。

Episode-12

ー料理に対しての価値観が変わったエピソード
イタリア料理でも日本料理的な小皿料理のお店に出会った時



ー料理に対しての価値観が変わったエピソードはありますか。

片岡シェフ
日本料理というのは、懐石のように色々なものを少しずつ食べるというのが特徴としてありますよね。
僕はミラノにずっといて、イタリア料理というのはどちらかというと小皿で出てくるというよりは、
大皿でダイナミックに出てくる料理だと思っていましたが、
ある日、イタリア料理でも日本料理的に小皿料理のお店に出会った時ですね。
「わぁやってるじゃん!こういう所でと…。
それが10何年の料理人生の中で、自分がやりたいことの表現方法の確認を出来た時です。

―そのお店はイタリアでは非常に珍しい出し方をされていたのですか。

片岡シェフ
ものすごく流行っているお店でした。

Episode-13

―料理でこだわっていること
こだわっていることを表面に出さずに隠しておくこと



ー料理でこだわっている(ゆずれない)ことと、その理由を教えてください。

片岡シェフ
こだわりというのは、僕たち料理人にとっては当たり前のことです。
“こだわっていることを、表面に出さないこと隠しておくことです。
お客さんに聞かれたら答えればいいと思います。
でも最近だとそれでは分からないので、「うちは○○産の○○を使っています」というのを
あまり大げさに言わないで、さらっと言いなさいと伝えています。
こだわるのは当たり前だからね。
最近はそれが分からないから表現してくださいという人も多いので、最近ではそれをあまり隠さないで、
ただしそれをそもそもという感じにはしないようにしています。それが反対にこだわっていることでしょうね。
こだわりをあまりこだわりとして表に出さないことです。

Episode-14

―調理器具でこだわっていること
自分に合った包丁を持つこと



―調理器具でこだわっている(ゆずれない)ことと、その理由を教えてください。

片岡シェフ
調理器具へのこだわりとしては、「弘法筆を選ばず」と言いますが、
僕には「鬼に金棒」という言葉のように、鬼に金棒を持たせたら強くなるでしょ。
だから、料理人がいい器具を持てば、よりいい仕事ができるようになります。
どちらかというと価値のあるものは持ったほうがいいと思います。



ー片岡シェフにとって価値ある調理道具は何でしょうか。

片岡シェフ
包丁です。その場所にあった包丁です。でも(実は)あまりこだわっていない。
福井県の高村さんのところの包丁を使用しています。
すごく切れ味がいいですが、すぐに欠けてしまいます。
欠けたら研げないので、切れ味はいいけど繊細な包丁です。
でも、ヨーロッパの料理人は皆持ちたがります。
そういったものを自分のコレクションに1本は入れておくことです。

もちろん機械もありますよ。ミキサーはどこのを使った方がいいとか
、真空調理の器具はこれがいいとか、釜はどこどこのが良いとか、色々ありますが、
それ(調理器具)も自分のこだわりの中に入れた方がいいですね。
それが自分に合っているかどうか、人によって微妙に違うから。
人に聞いたり、自分では使いこまないと分からないわけだし。

昔は、そんなに器具も無かったのです。ガスオーブンだったし。
電気オーブンとか、スチームコンベクションなんて無かったですから。
今は沢山あり、日本のメーカーがいいのか、外国のメーカーがいいのかということもあるわけです。
そういうことを、今はキッチンスタジオへ見に行って試すことが出来る。今は皆そうです。
火を入れるのも低温調理をするのか、油で入れるのか、お湯で入れるのか、緩衝材が水なのか油なのか、
それによって調理方法が変わってくるわけです。それによって調理の幅が広がっていくわけです。
それは時代のニーズとして必要だと思います。でもそれが廃れちゃう場合もあるから。
昔はすごく流行ったけど、今は使っていないよとか、もちろんそういうこともあるので。
時代の流れだから見極められない。

Episode-15

―自分がイメージした料理を一皿にするまでの試行錯誤
イメージしたものは瞬間に作ること
1回目がいいので、あまりこちょこちょとこね回さない



―自分がイメージした料理を実際に一皿にして提供するまでには どのような試行錯誤をしていますか?

片岡シェフ
試行錯誤というのは人によって、パッと生まれる人と、何回やってもダメな人、
その時はいいけど2回目はダメとか、色々あるので何とも言えないですね。

―片岡シェフの場合はどうでしょうか。

片岡シェフ
1回で出来ます。だから人によって違うの。
1回目がいいので、あまりこちょこちょとこね回さないです。2回目のもあるよ。
あまり、こね回さないで瞬間に思い付いたことをやったほうが新鮮だということです。
あとは積み重ねなので、ここを改善したりするといった微調整ですね。

 

Episode-16

―プロの料理人にとってレシピの存在と価値
レシピの価値はない
レシピ通りにやっても全く同じには出来ません



―プロの料理人にとってレシピの存在とその価値とは何でしょうか?

片岡シェフ
レシピの価値はないです。僕は参考にしかしないです。
だって書いている人が皆適当に書いているのだから。
書いている人が言っていますから間違いないです。
だから、レシピは絶対に信じてはいけないです。参考程度にすればいい。
例えば美味しそうな料理の写真があって、どうやって作るのだろうと思ったときに、
そのレシピ通りにやっても全く同じ通りには出来ません。表現することは無理です。
出来る人は写真を見ただけで出来ます。

素人の人にとっては、レシピをそのままやっても出来ないから、料理教室に通うということですね。
その人が作っているところを見て、味見させてもらって、10年通わないとダメです。
僕の味を盗みたかったら10年です。そうすると僕の料理がすぐ分かるはずです。
盛り付けとか味とか感覚だったり。
それは僕だけじゃなくて、日本料理の野﨑さんの所へ行ったり、脇屋さんの所へ行ったりするのも同じです。
ずっと通っていると自分の舌に染み付きます。

Episode-17

―独立を決めたキッカケ
ある経営者が僕を引き抜きに来たことで気が付き独立を決意



―独立を決めたキッカケ(タイミング)は何ですか?

片岡シェフ
僕がマリーエにいたときに、6年の契約をしていましたが、
4年経った頃にある経営者が僕を引き抜きに来ました。高額な給料と好条件を言ってきました。
その時にふと思ったの「自分はなんでこんな風にされるんだろう」
「あ、そうか!僕がこの店で働いたらそれだけ売上が上がるのか、だからその人はお金を出すと言っているのか」だったら、自分がやったらいいんじゃない?!とその時に気が付きました。
その後マリーエのオーナーにすぐ「すみません。2年後独立させてください、2年経つまでは自分はここでやります」と言いました。それで6年経って、辞めてアルポルトをオープンしました。

―ヘッドハンティングをされて初めて価値に気づいたとおっしゃっていましたが、
そんなすごい条件が
くるまで、片岡シェフの中ではすごいという気持ちはなかったのですか。

片岡シェフ
ないです。全くの素人でしたから。だから劣等感の塊です。
石鍋さんの料理をみて本当にすごいと思いながらやっていました。
28歳位の時、同じ本出してるよ「エルベるざしょん」。
その時、坂井さんも居たし、色んな方と何人かで柴田書店の本を書いたんです。
その時に、皆料理がすごいの。自分だけがこうなのかと思って見てました。

―好条件を持ちかけられた時に「あれ?」と気づくんですね。

片岡シェフ
そうです。



―料理人の世界は何年契約という形で契約をされている方もいるのですか。

片岡シェフ
それは人それぞれです。契約違反をしたらいけないからね。
その時はその時のルールがあるはずですから。
違反したらお金を取られるということはなかったです。
でもそれなりに1件の店をやる時には、それだけのお金を払ってリスクがあるわけですから、
そういうこと(契約)をきっちりしておかないといけないというのは経営者の立場ですよね。

Episode-18

―経営者片岡護の理念とは
お店の全ての人たちがオーケストラであり、料理を奏でる



―経営者片岡護の理念は何ですか?

片岡シェフ
料理はオーケストラですから、1匹狼的なことは嫌です。
だから自分が色んなコックさん、サービス、全ての人たちが料理を奏でるという経営をしたいです。
それで今のアルポルトがあります。

―オーケストラという例えの心ですが、皆で奏でるということでしょうか。

片岡シェフ
ソリストではないです。ソリストは1人でやればいいと思います。
でも人を使ってやるのはソリストではないですよね。やっぱりオーケストラです。

―今は、経営者としてのお顔と料理長としてのお顔どちらもお持ちですが、
そのバランスはご自身でど
うやって取っていらっしゃいますか。

片岡シェフ
僕いい加減だから、自分は料理を作ることには長けていましたが、計算は一切しません。
それは家内がやっています。皆がそれぞれを助け合いながらやるということです。

Episode-19

―最高のおもてなしとは
心からの形ではないサービス



―最高のおもてなしとは何でしょうか?

片岡シェフ
最高のおもてなしとは、その人がお店に行って帰るときに
「美味しかったよ、また来るからね」と言って帰られる時です。
そういうサービスと料理を出していきたいです。
心からのサービス、形ではなく、それが大切だと思います。

―また行きたいと思ってもらえるサービスはどんなものでしょうか。

片岡シェフ
お客様は神様という気持ちで接することです。
料理することもサービスすることも気持ちが伝わらないとお客様は帰ってきてくれません。
でもそれが失敗する事もあります。忙しいとね。
昔はバブリーな時があったから、「二度と行くか」という人もいました。
でも反対に片岡の所は必ず行ってあげようという人もいるわけです。
だから自分の至らないところは沢山あるけれど、そういうことは心がけていかないといけないなと思います。



―ご自身の心構えや、その時の様子はお客様を見ていれば分かるわけですね。

片岡シェフ
でも、お客様というのは心にないことをいう人もいるから、これも気をつけなければいけない。
「美味しい、美味しい」といって、でも裏では「不味い」と。こういう人はもう来ないから。
それぞれ皆違うわけだから、味も人も関係も合う人が来るわけです。
なのでそこまで全部を合わせるということは不可能です。
だけど自分はそういうことに気を使うということが大切です。

Episode-20

―スタッフとのコミュニケーションで意識していること
何でも言える環境を作ること

―スタッフとのコミュニケーションで意識していることは何ですか?

片岡シェフ
僕は経営者でトップでしょ。けど、皆、僕のことをトップだと思っていないから。
くだけているから。これがアルポルトの雰囲気です。

 



―いま現在、スタッフの方は何人くらいいら
っしゃいますか。

片岡シェフ
10人くらいです。その前は15人くらいでしたが、コロナで5人くらい切りました。
元々独立を決めていて、辞めてくれた人もいますけど、
数人はもう厳しいからどこかへ行ったほうがいいのではといった人もいます。
それから新入生は断りました。
4月からなので、どうなるか分からないし、うちで続けていけるのかも分からなかったし、
すごく大変で、何とか継続できているので、それは良かったと思います。



―色々なお店がある世界
の中で、”コミュニケーション”というキーワードがありますが、
片岡シェフなりに意識されていることは何でしょうか。

片岡シェフ
何でも言える環境、それがコミュニケーションです。
言いたいことも言えないようなコミュニケーションではダメです。
それから、よくパワハラ、セクハラというのがあるけれど、
自分が嫌な人がいるからパワハラセクハラになるわけで、
自分が好きな人や尊敬している人に「がんばれよ」って肩をたたかれてもこれはパワハラにはならないです。
でも嫌いな人にされると、これはパワハラになるわけです。言葉もみんなそうです。
そういった意味では、心の疎通を常にしておくことが大切だと思います。

―最初におっしゃった「経営者だと思われていないから」というのはそこに繋がるのですね。

片岡シェフ
僕はね。でも人によっては怖がられているシェフもいるけど、
僕はそんなことできないから、甘く見られているというか
でもそれがまた良いところであり、悪いところでもあると思います。それでやってきたので。
僕は叩き上げのコックではないので、そういうことが出来るのではないかなと思います。

Episode-21

―すぐに辞めて行ってしまう人に共通すること
修行は精神的に強くなることで 料理を覚えることではない
続けられる子が勝つ



―離職率が高い業界ですが、すぐに辞めていってしまう人に共通して欠けていることはありますか?

片岡シェフ
辞める子というのは、元々教育上の中で最近の子は可愛がられすぎていると思います。
イタリア語で“ドロッポこっらーれ”と言います。こラーレは“可愛がられ過ぎ”という意味。
やっぱり、可愛い子は苦労させないといけないです。だけど、それを親がしないです。

例えば、「今日はこんな風に怒られちゃった」と言って帰れば「じゃあ辞めちゃいなさい」と親が言います。
そうではなくて、親はその時に「何言ってんの、それくらいのこと当たり前でしょ、殴られても何でもいいからバンバンやりなさい」ぐらいのことを言わないと、成功するシェフにはならないです。
だって世の中はもっと厳しいですから。
自分が独立したときに、世の中に出るわけで、その時には誰も助けてはくれません。財産を失いますから。
だからそのためにも修行は大切です。
精神的に強くなることが大切で、料理を覚えることではありません。
そういう気持ちを持つことが修行です。
だから、うちの子ですぐに辞める子もいるし、ずっといる子もいるし、いる方が勝ちです。
続けられる子が勝ちです。馬鹿だ、何だって言われても続けることです。
そうすると10年経ったときにこの子は芽が出てきます。すぐに辞めてしまう子は2週間で辞めます。
この子も正解です。この店には合わないと思ったらすぐに辞めることです。
それは、合うところに行けばいいわけで、すぐ辞めることに対しては悪いとも言えないです。
その子が自分で、将来や性格を分かることが大切です。

Episode-22

―若い料理人に求めるもの
20歳までに自分の才能や性格を把握して
人生のベースを作っておくこと



ー若い料理人に求めるものは何ですか?

片岡シェフ人生の若い時か20歳になるまでに、自分の性格、どういうことが好きなのかを分かることです。
それが分からないと、何をやっても失敗します。自分は絶対にシェフには向かない子もいます。
でもこの子はセコンドとしてはすごいなという子もいます。
経営をする計算はすごいな、でも料理は出来ないという子もいます。
そうしたらサービスをやればいいわけです。人を束ねることができないのなら、セコンドをやればいいわけです。
でも、それは名セコンドになります。
だから自分の才能とか性格を分かる事です。それを20歳までにしてください。そこから先の人生は惰性です。
そこから自分が分かっていないと上積みがなく、自分のベースがないのに上積みなんて出来ないです。
人生のベースです。そこを作り上げることです。
それは本人ではなく、今の学校の教育です。
あなたがなりたいものが何かということ、自分は絵が好き、音楽が好き、料理が好き、
でもそういうのが嫌いな子もいます。石を集めたり、虫を集めたりするのが好きな子もいます。
それでいいと思います。そういうことを自分の中で知ることが大切です。
それを20歳までに、そこからはベースを作っておいて、より人生の積み重ねをしていってほしいです。
それで50,60歳になったときに自分の人生は良かったなと思えて死ねることが僕は最高の人生だと思っています。
だからそのためには、人によって年齢は違うと思いますが、基準としては20歳くらいだと僕は思っています。

Episode-23

―名店として愛されるお店を維持していく秘訣
コストパフォーマンスを大切に、
お客様がホッとするお店づくりが大切



―長年、名店として愛されるお店を維持していく秘訣は何ですか?

片岡シェフ
店を続けられるというのは、お客様に好かれることですが、ではなぜ好かれるのかということですが、
具体的にはコストパフォーマンスだと思います。この値段に対して、この味と料理ということも大切です。
それと、お店にお客様が行ったときにホッとするような心のオアシスになることです。
食べることによってホッとするお店です。行ったら緊張してイライラするようなお店はダメですよね。
1回行って終わりです。でもそういうのが好きな人もいます。そういう人はそこに行けばいいと思います。
でも人によっては、「ちょっと料理はあれだけど、この値段なら充分じゃない」というコスパが、
ホッとすれば、そこに通うわけです。だから、自分のお店としてはそういうことを考えています。

―実際にコストパフォーマンスを極めるために努力されていることはありますか。

片岡シェフ
色んなお店に行くことです。コストパフォーマンスのいいお店はどこも流行っています。
ただ、コロナによって変わっているところもありますけど、
これからはそこを心がけていったお店が生き残っていくのではないかと思います。

Episode-24

―料理人人生で一番感謝していること
家庭生活がうまくいっていること



―料理人人生で一番感謝していることは何ですか?

片岡シェフ
自分の家の家族がまとまっていることです。
(忙しくて)子供たちが団らんの時にお父さん、お母さんがいないわけです。
こういう家庭は崩壊しやすいわけですよ。
でもなんとか今崩壊しないでやれているということは幸せだと思っています。
成功する秘訣というのは、パートナーが必要だということです。

―料理業界はご夫婦でされている方は多いのですか。

片岡シェフ
多いよ。そういうところはあまり失敗しないです。離婚したときは大変になります。
でも、離婚しても大変流行っているところもありますから、それは人柄ですよね。

―料理界で出会って一緒に経営される方が多いですか。

片岡シェフ
それは多いですね。料理界で出会ってから結婚する人が多いです。
出会いが少ないから、出会いがあればそうですね。

Episode-25

―料理人人生における最終的な目標とは
人生終わるときに 料理人で良かったと感じること



ー料理人人生における最終的な目標は何ですか?そのために取り組んでいることはありますか?

片岡シェフ
自分が死ぬときに、料理人をやってきて良かったと思い死ねることです。

―今の段階では充分達成されている気がしますがどうでしょうか。

片岡シェフ
まだだよ。料理というのは完成なんてありえないから。
まだ足りない、新しい料理が出てきたのではないか、これはどうしたらいいのかということを、
時代が変わって価値観が変わっていくわけですから、終わりはないです。
だから終わりと考えてしまった時が、その人の人生の終わりです。
でもそれが死ぬまで続くということが1番の幸せだと思います。

―そのために取り組んでいることはありますか。

片岡シェフ
健康管理です。続けるには健康でないと無理です。 

Episode-26

―ズバリ!一流の料理人とは
ずっと続けられること



ーズバリ!一流の料理人とは何ですか?

片岡シェフ
自分の思っている理想を続けることができることです。なかなか続けられないんだよね。
例えば、店を開いてずっと最後までという店はなかなかないです。
10年続けばまだいいかな、20年になったらもっと大変、30年になったら本当に少なくなる。
それ以上になると数えるほどしかない。
料理人として、また経営する者として、長く続けられるというのは、すごい至難の業です。
だから、そういう店というのは色んな意味で幸せだと思います。
うちは38年続いていますが、そうすると皆老舗と呼びます。
でも、「老舗じゃないよ、まだ新しいよ」という気持ちでやっていますが、
世の中はそうは思ってくれないです。38年経ったらもう老舗で、
いつ逝っちゃってもいいと思われることが不満ですね。
でも京都とかに行くと、100200年が当たり前だと言われてしまいます。
38年なんてまだ子供じゃんって言われちゃうから。だから上には上がいますね。

Episode-27

―コロナによって気づかされたこと
どうやって乗り越えていくか 1つの冒険だと思う



ーコロナによって気づかされたことはありますか?

片岡シェフ
コロナというのは僕の人生の中で初めてです。多分日本人は1回も経験してないと思います。
こういう人生の中で、コロナに出会えたのは幸せだと思います。
この試練をどうやって自分の中で乗り越えていくのか、ということも1つの冒険だと思っています。

―コロナは業種によっては忙しくなるところもある

片岡シェフ
そうです。お惣菜部門は前よりいいんだから。



―コロナによって新しい試みとかはありましたか。


片岡シェフ
店を閉めることです。こういう時はジッとしているのが1番だと思いました。
何かをして、事故を起こしたらもう店が終わってしまいます。
例えば、コロナが始まったのは(2020年)4月で、だんだん雨期に入って1番中毒が増えてくるときに、
お弁当を慣れていない中でやって事故を起こしたらどうします?
もちろん、そういうノウハウがあるお弁当屋さんは絶対やるべきです。
でもノウハウがない中でやっても、うちとしてはまずいかなと思ったのです。リスクは負わないようにと。
金銭的なリスクは始まってしまっていますから、それをどのような形でのリスクをとるかを考えた結果、
休むということが自分にはいいのではないかと思いました。なので、僕たちのお店は2か月間休みました。

―その2か月間はどんなことを考えて過ごされていましたか。

片岡シェフ
外へ出てはいけない、マスクをしろ、蜜になるなと言われていたので、それを守りました。
なので、毎日スーパーに通って今日は何を食べようとか。
僕は普通の人の普通の生活に戻りました。だから痩せました。うちの家内は反対に太りました
。今まで出来なかった普通の生活を2か月間過ごさせていただいたのは良かったと思います。

―改めまして、コロナによって気づかされたことは何でしょうか?

片岡シェフ
国が支援してくれるという支援制度というのはすごく有難く感じました。
お金を無担保無利子で貸してくれるわけですから。
こういうことをやってくれる国は素晴らしいと思いました。
これを返していかなくてはいけないという心配もあります。
本当に新しい試練だと思いました。
だからこれをどうやって乗り越えていくかということも1つの不安材料でもあるし、
楽しみでもあるし、色んな複雑な思いがしています。

Episode-28

―コロナ渦で始めた新たな働き方は
原価の考え方、仕入れの方法論とかをより考えた新たなメニュー作り



ーコロナ禍で新たな働き方(収入源)は始めましたか?


片岡シェフ
うちはこういうお店ですから、従業員に対して、休みも少なかったですし、
労働時間も長かったですけど、それはやっぱり改革しなくてはいけないということを少し考え始めました。
だからと言って、ホテルのように週休2日にして、8時間労働で残業をなくすというのも、
ちょっと専門店としては不安も感じます。その辺の葛藤ですね。
でもそこまで考えるようになったというのは新しいことではないかと思います。

Episode-29

学生からの質問➀
ーイタリア料理とフランス料理の違い



―フレンチとイタリアンは、どのような違いがあるのですか?

片岡シェフ
イタリア料理とフランス料理の違いというのは、1番大きな特徴はイタリア料理にはパスタがあり、
フランス料理にはパスタがありません。これが大きな違いです。形態的には一緒です。
前菜があって、スープがあって、魚・肉、デザート、これは変わりません。
ただイタリア料理には、スープの所にパスタが来ます。
パスタが来るので、魚と肉が出ないで、魚か肉かどちらかが出ます。
ただしコースの料理を専門としているお店は全部出てきます。

ー高校生の子たちの世代は、生まれたときからパスタがある時代ですよね。

片岡シェフ
だからパスタというのは日本の食文化の中に定着しましたよね。

Episode-30

学生からの質問②
ーイタリア料理で一番代表的な料理



―イタリアンで最も代表的な料理は何ですか?

片岡シェフ
やっぱりパスタですよね。パスタなくしてイタリア料理は語れないと思います。
だから麺ですよね。なんでこれだけイタリア料理が日本に定着したかというと麺文化だからです。
日本人はラーメン、そば、うどんが好きですよね。その中でもスパゲッティは上位のほうに来ていると思います。
ラーメンを家庭で作るにはスープを作らなくてはいけない。インスタントはすぐ出来ますが、
これを全部作ろうと思うと、膨大な時間がかかります。
ただしパスタは5分で終わります。だからそこが大きな違いですよね。



―片岡シェフが伝えたいパスタ料理の魅力は何でしょうか。

片岡シェフ
パスタはアルデンテです。歯ごたえ。
だからその歯ごたえを出して、日本人の感覚の共通点もパスタにはあります。
そこが、イタリア料理の日本人にとっての魅力です。
フランスやスペインに行って、そういうパスタは皆無です。彼らはアルデンテという言葉を知らないです。
ぐちゃぐちゃパスタは好きです。どちらかというと柔らかく茹でてお肉の付け合わせになるのはありです。
ところが孤立してパスタの料理というのはあまりないです。

―お米もそうですよね。

片岡シェフ
そこはまた違います。お米は、イタリアは芯飯ですが、日本は芯がないです。パエリアはその中間です。
スペインはお米文化が発達しているから、スペインとイタリアのリゾットとパエリアはお米料理です。
パエリアは炊くからちょっと日本のお米に似た部分があります。煮たときに芯が残ります。
それがパスタのアルデンテという1つの感覚に似ているので、リゾットもアルデンテに仕上げるということです。
でもそれを初めて食べる日本人の人は芯があって、美味しくないと言います。
だけどちゃんと作ったアルデンテのリゾットは美味しいです。それに慣れたらもう芯じゃないとダメです。 

 

Episode-31

学生からの質問③
ー料理を提供する上で一番こだわっているところ
ーイタリア料理で最も難しい料理
ー収入面など夢があるエピソード



―片岡シェフが料理を提供する上で、1番こだわっているところはどこですか?

片岡シェフ
なるべく美味しいものは美味しく、それからゆっくり食べるときはゆっくり、そういう緩急をつけることです。

―イタリア料理で最も難しい料理は何かありますか?

片岡シェフ
難しい料理は1番簡単な料理です。
スパゲッティのアーリオオーリオ(ペペロンチーノ)というのがありますが、あれが1番難しいです。
これを美味しく出来たらパスタはマスターしたと思ってください。




ー料理業界を目指している方々が沢山いらっしゃると思いますけど、夢のある話という事で、キャリアを積んで皆さんに認められるようになった時の収入面や、生活面で皆さんが夢を見られるようなエピソード何かありますか?

片岡シェフ
料理人が飲食のことをやっていて、すごく収入が増えたりとか、
沢山あるという事は、他の業種からすれば本当に皆無です。
そこそこは溜まりますが、例えば、色んな他の職業ではというお金が溜まっていくわけです。
何もしなくても、右から左へ溜まっていきます。
でも僕たちの仕事は、毎日コツコツやったとしても、そんなお金は貯まりません。
せいぜい何千万とか、普通の人が年金をもらえるくらいのお金しか貯まりません。
だから、地味な仕事です。でも人のために尽くすわけです。
それから作ったときの喜びや、楽しみの色んなプラスアルファがあります。
料理人の人生は死ぬまで続けることが出来ます。
だからそういうことの価値観というのはお金に変えられないものがあります。
だから、最初に言ったように自分の価値観というものがどこにあるか。
もしお金を儲けたいと思うなら専門店は辞めて、ファミレスとか、チェーン店とかそういう飲食に行ったほうがいいと思います。だから専門のイタリア料理や、フランス料理人とか、日本の板前さんとかになるのは、好きだからなります。お金や生活環境が良くなるというのは、あとからついてきます。
そのすごいお金が残って、スポーツカー乗り回したり、高級車乗り回したりというようなシェフは
本当に少ないです。某日本料理屋さんの3つ星になった人はすごい車に乗っています。

ーそれは先程おっしゃっていたストレス発散の1つが車だったという事でしょうか。

片岡シェフ
そうです。そこまでいくには、最初はお金を儲けようとは誰も思っていないです。
だけどもそれは、50歳過ぎて、人生の最後くらいになってくるとお金がバッと貯まります。
だから、最初からお金を貯めようと思うと、その人生はそこで終わりです。
そのために働くと、お金は後からついてこないです。
だから、最初に人のために働いて、自分の店の売り上げが上がって、1020年とやってくると、
お金がだんだん貯まってきて、じゃあ死ぬ前になってそのお金をどうするの?となったときに、
その人は何にお金を使うのかという事になります。
だけど、お金をもって死ぬことは出来ないから、もしその人独身だったらそのお金は使ってしまいますよね。





ー先程でました、一生続けられる仕事とおっしゃっていましたが、そこもすごい財産ですよね。

片岡シェフ
そういう有形無形の財産という事を考えて欲しいです。

ーまさに手に職を付けることが出来る職業ですね。

片岡シェフ
“人生のお金にない価値観というのを得られることは、この職業のいい所だと思います。



ー片岡さん本人も様々な本を執筆されたりですとか、夢の部分としてメディアに出られることも多々あったかと思いますが、メディアとの関りで見てる方が夢を感じるエピソードはありますか?

片岡シェフ
メディアというのは、僕達が利用されているのですよね。だから、利用されていると思ってはダメです。
お互いに利用し、利用され、お互いの信頼関係で誠実にやる事、
それから、その人の性格が全部、画面に出ますから、自分の料理人生や、
人間性を大切するのかという事が、画面に出てきます。だから、その人のちゃんとした人生を送らないとダメです。

ー色んな出演オファーがあると思いますが、何を基準に選ばれていますか。

片岡シェフ
なんでも受けますが、食に関係すること、自分の人生が何もない所から
色んな人に育てられてここまで来たわけですね。そういったことからすれば、
やっぱり人のために役立つことであれば、メディアというのは、マスコミやテレビラジオだけではなくて、
料理教室とか、学校の教室とかは、ギャランティーではないですね。
僕を必要としていることがあれば、学校にも行きます。

ー何か具体的に影響があったことはありましたか。

片岡シェフ
イタリア料理がここまでになったのはどうして?
48年くらい料理を続けていると、レギュラー番組に出続けるという事もあって、
最初は、イタリア料理なんて誰も知りませんでした。それでオリーブオイルを沢山使うわけですよ。
そうすると目で見て、「あんなに入れちゃって…」となるわけですよ。
でも、これはこのくらい入れないと美味しくないです。
こういうベースを教えてきたからこそ、今があると思っています。
それは、自分が続けてきたことによって、色んなメディアが本も雑誌もそうですが、
それでいまがあると思っています。色んなコックさんがお互いにやってきて、協会とかを作って、
イタリア料理の発展に貢献してきたわけです。それで今があると思っています。
東京にイタリア料理2700件のお店があります。カフェとかも含めると、イタリア関係で30000件以上あります。
そうするとどこに行ってもあるわけですよ。



ー片岡さんがアルポルトを始められたときはどのくらいでしたか。

片岡シェフ
10件です。その中で僕は、全然イタリアらしいことをしていなかったです。
最初から小皿料理だったので、イタリア料理ではないと思われていました。
でも美味しいパスタをこの中に入れていたわけです。

ー日本のイタリアンを作られたという感じですよね。

片岡シェフ
違うよ、僕のイタリアンを作りました。
自分の世界のイタリアンという事は、創造的なイタリアンで、自分の人生の中でやってきたことです。

ーそれが不可能ではないという事ですよね。

片岡シェフ
だから誰もやらないことをやってきました。
自分にしか出来ないことをやりなさい。だから自分の性格を知る事、そこから始まります。
それが分からない子は、途中で皆失敗し、最後まで残りません。
お金の事ばかり考えている子はすぐにダウンします。そうじゃなくて、好きで始めないとダメです。
それの後に、そういう色んな事が付いてきます。
継続をすること、好きである事を大切にし、それを続けるにはそれなりの結婚相手も大切ですし、
健康管理も大切ですし、ストレス発散するために、色んな音楽を聴いたり、映画へ行ったり、
歌舞伎をみたり、色んな事をしながら、自分の人生の中の教養というものを少しずつ自分の中で育てていくことです。そうするとずっと続けることが出来ます。

ー片岡シェフからご覧になって、ご自分自身で夢を叶えていらっしゃる方や、こんなすごい人が料理界にいるよという方はいらっしゃいますか?

片岡シェフ
沢山いますよ。だって続けている人は皆いますよ。
落合さんだってそうでしょ。それから、田村さんの所も3代目だし、脇屋さんの所も。
皆続けてきているシェフですよね。
ただ、健康を害して、残念だけど、辞めてしまう方もいらっしゃるわけですよ。
だけど、ちゃんと名前を残している人もいますよね。
坂井シェフも、一緒に旅行したら外人の人が、サインと言ってきますよ。
外国に来てもムッシュを知っている人がいましたね。

reportインタビュアー紹介・レポート

インタビュアー

  • 駒場学園高等学校
    食物調理科 1年
    吉田 裕太くん

レポート

今回はお忙しい中、インタビューをお答えしていただき、ありがとうございました。

私がイタリアンの道に進もうと決めたのは、ある料理を食べてからでした。それはパスタのペペロンチーノです。
まだ小学生だったので、お店の名前などは忘れてしまったのですが、小さい頃からパスタが好きだった私が今こうして料理人を目指して食物調理科に入ったのも、あの時食べたパスタが無ければ、普通に勉強していたと思います。私に料理の楽しさと奥深さ、そしてこのようなインタビューという貴重な体験をさせてくれたパスタには感謝しきれません。

又、パスタについて教えて下さった時のアルデンテがパスタからお米料理にも話題が広がり、料理に対するさらなる奥深さと料理の幅広さにとても好奇心を揺さぶられました。
この好奇心をつねに持ち続け、片岡シェフが作るような美しい料理、そして私のように料理を食べ、料理を好きになってくれるような料理を作れるよう、これからも一層努力しようと思いました。

recipeお店を代表する3品

厨房での片岡護シェフの姿をお楽しみください。

白身魚のカルパッチョ

日本人にしかできないカルパッチョ。
和風の要素としてドレッシングに醤油を使用している。

冷製カッペリーニケッカ風

トマトの甘みが引き立つシンプルな一品。
ローマのケッカというソースを上手く取り入れた冷製パスタ。

赤牛のタリアータ

野生のルッコラを使用するので、辛みと香りがいいアクセントとなり、パルメザンの味でさらにお肉とよく合うさっぱりとした料理。

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  • 奥俯瞰カメラ

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